「KAWANOWA」な人たち Vol.11後編 株式会社サトー 代表取締役 佐藤晃一郎さん “何を売るか、どう売るか”のアイデアを常に考ています

KAWANOWAな人たち
前回までは、株式会社サトーの佐藤社長が傘メーカーの仕事からバッグへと転身されたストーリーでした。カタログギフトで10色展開のマザーバッグを提案するという、今までなかった切り口を考えたというお話しでした。もちろん、その続きがあります。

“セミオーダー”のバッグをカタログ誌上で仕組み化

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カタログで「自分仕様」が作れる。

次にチャレンジされたのが、カタログギフトでは画期的である「セミオーダーバッグ」でした。一般的には、カタログ掲載のアイテムをお客様に注文してもらい、指定された商品を発送するというのが一連の流れです。

そうではなく、カタログの誌面上で「革の素材はシュリンクレザーかオーストリッチの型押しか?」、「バッグ本体のカラーは何色か?」、「手ヒモは長いか短いか?」、「内側の生地の色は何色か?」と、200通りのパターンから自由に選び、自分だけの一本を作ることができる仕組みを作りました。

カタログギフトとしては画期的な試みであり、佐藤さんが依頼しているメーカーさんとの信頼関係があってこそ可能なチャレンジと言えるでしょう。

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持ち手部分の長さが選べるのも楽しい

心躍る“買い物体験”を楽しんでほしい

実は、カタログギフトを活用するのは地方のシニア世代。贈り物や返礼文化が根強いため、まだまだなくなることはないジャンルなのだとか。

また地方では、百貨店のクローズが続き、商店街もシャッター通りになっている昨今、心躍るものが買える場所がシニアにとって少なくなってきています。

都心部であれば、オーダーバッグを作る機会は身近にあるかもしれませんが、地方のシニア世代にとって、好きな色を組み合わせてバッグを作れる機会などないため、きっとワクワクする時間に違いありません。

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お客さまの好みの色味や質感で作られたバッグが並びます

「こんな面倒なことは、普通の職人さんだったらやりません(笑) 。私の立場で、お客様がどんなことに興味を持ち、どうすれば喜んでくれるかを常に考えるからこそ思いつくことなんですよね。 今では日本全国から毎月500件ずつ依頼が来ていて、生産が追い付かないくらいです。」

と、笑顔の佐藤社長。

新しい事務所には、納品されたバッグが所狭しと並び、天井からも在庫が下がっているほど。「KAWANOWA」のリーフレットもさりげなく封入され、日々出荷に追われているとのことです。

「ふじやま織」に惹かれてバッグを製作

ギフトカタログの誌面上に、今までなかった「10色展開のマザーバッグ」、「オーダーバッグ」、「職人のフューチャリング」などの様々な切り口を掲げ、オリジナリティを発揮されてきた佐藤さん。

そしてKAWANOWAでも人気の高い、華やかな織物である「ふじやま織」についてお聞きしました。

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ふじやま織の華やかな糸

「富士山のふもとの富士吉田市には、数多くの機織りメーカーがあります。富士の湧き水で先染めした極細の糸を、職人が丹念に何度も打ち込む“高密度な織り方”が特徴です。美しいドレープや光沢感を持つこの織物の美しさに、いっぺんに魅了されてしまいました。

私のところでは宮下織物さんの素材を使っています。約一万種という膨大な見本帳の中から、このクジャク柄やローズ柄などバッグに合う織り柄をセレクトしました。軽く仕上がる上に気軽に持っていただけるよう、ポリエステルとアセテートを半々くらいで使っています。」

【ふじやま織】手提げバッグ(マグネット)

【ふじやま織】手提げバッグ(マグネット)

上品な光沢と美しさが特徴のサテン、タフタ、シャンブレー等は、主に舞台衣装やウエディングドレス等に使われています。ヨーロッパコレクションに出るような著名ブランドにも、サンプルを出すこともあるのだとか。

またこの「ふじやま織」は、富士吉田市の街起こしの象徴としても位置付けられており、実は佐藤社長のふじやま織のバッグは、富士吉田市の「ふるさと納税」の返礼品カタログに掲載されているとのことです。

次々に立ち上がる新しいアイデア

もちろん佐藤社長のこと、「ふじやま織」の次のアイデアも温めているとのこと。日本で豪華な織物といえば京都の「西陣織」が代表格。金糸銀糸を使って文様が浮き出るように織られた“金襴(きんらん)”と呼ばれる織物を指し、一般的な西陣織の帯でも数十万円以上するものがほとんどです。

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カジュアルに持てる西陣織バッグを考案中

その時に佐藤社長が組んだのは、絹ではなく「ポリエステル糸」を使い、小ロットでも対応する西陣織メーカーでした。

「こうすることで価格もこなれ、カジュアルに使うことができるようになりました。輝きのあるゴージャスな見た目でありながら、軽くて洋装にも持てるものに仕上がりました。日本が持っている“伝統素材”を、そのままではなく『いまのライフスタイル』に活かすようなモノづくりを考えていきたいですね」

と佐藤社長は語ります。

「売る」ということに真摯に向き合い、次々と新しい商材と出会ってきた佐藤社長。柔らかい発想とエネルギーには元気を頂きました。

「KAWANOWA」に掲載された「ふじやま織」や「印伝」のかばんたちには、そんなエピソードが隠されていたのですね。確かに目の前で素材を拝見すると、一本一本の糸が放つ輝きが確認でき、吸い込まれそうになりました。みなさまも、今一度商品を見ていただけると嬉しいです。

この度はありがとうございました。

◆株式会社サトー
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文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝