「KAWANOWA」な人たち Vol.12前編 有限会社アヴェニュー 代表取締役 阿部三千生さん 「素材選びから型紙、製品作りまで一貫して行える実力派メーカー」 KAWANOWAな人たち 2017年11月6日2018年9月13日 by chie kawasaki 素材選びから手掛ける実力派メーカー 阿部三千生さん 後編はこちら 「KAWANOWA」のなかでも小規模なメーカーながら、著名なブランドのOEM(相手先ブランド生産)デザイン、プライベートブランドのデザインからサンプル品まで、一貫してバッグを制作する実力派「有限会社アヴェニュー」さん。なんとご夫婦二人で切り盛りしていることに驚きですが、今までも数多くの高品質な製品を輩出し、ものづくりの実力たるや目を見張るばかりです。 社長の阿部三千生さんと、経理とECをご担当する奥様の和子さんのお二人に、これまでのものづくりや仕事の考え方について伺いました。 “かゆいところに手が届く”デザイン 現在「KAWANOWA」に掲載中の「アヴェニュー・ストーリー」は、ちょっとひねりの効いたデザインや、ユニークな裏地、ベストサイズのポケットなど使い勝手の良さが魅力。主張は控えめながら“かゆいところに手が届く”デザインが秀逸です。 素材も革だけにこだわることなく、ナイロンとのコンビネーションやパッチワーク使いなど、女性がワクワクできるようなアイテムが揃います。 光沢のある素材で、見る角度によって表情が変わります。 社長の阿部三千生さんは、この業界では珍しい“一代目”社長。歴代のしがらみなどがないので新しいアイデアにはどんどんチャレンジし、いまも現役で革のハンドバッグづくりを続けています。 現在こちらの事務所では、デザイナーから上がってきたバッグのデザイン(図面)から型紙を起こす作業や、サンプル製作、検品、タグ付けなどの作業を行っています。 そしてこの仕事に携わることになった始まりをお聞きすると、なんとご兄弟がきっかけだったとか。当時のエピソードを伺いました。 ウィメンズ革コンビ2WAYバック。素材感の異なる革を組み合わせたデザインが秀逸。 口枠のセカンドバッグがヒット 「実は兄が、叔父の営む会社でバッグ職人の修行をしていました。その会社は、当時は技術も難しく手掛けるところがあまりなかった“口枠のセカンドバッグ”が作れる専門の業者でした。 60、70年代には本当によく売れたんです。私も誘われるままに叔父の会社で働き、腕を磨いてから、兄と共に独立します。 今では作る人が少なくなった、口枠のハンドバッグ 最初は二人で盛り立てていましたが、しばらくすると兄は『もっと別の仕事を探す』と言って突然去ってしまいます。とても腕がよかったのにどうして辞めたのか、今でもよくわかりませんが…」 と苦笑する阿部社長。 とはいえ、思い返すとその会社で磨いた“口枠づくり”の腕がものを言い、その後のものづくりへの布石となった、と阿部社長は振り返ります。 営業経験を通じて更に世界が広がる 一通りの職人としての研鑽を積んでのち、「外の世界も見なくてはいけない」と思い立って営業の仕事にもチャレンジすることになります。 様々な企業に積極的に出向いて、“営業提案”や“リアルな現場”の知識を積み重ねることで、ものづくりに留まらない幅広い視野を身に着けられました。 そして当時は、三本の指に入ると言われていた大手ハンドバッグ卸の会社に出向き、ある営業マンの方と運命的な出会いを果たします。 二人は意気投合し、その方が思い描くイメージ通りのサンプルを作れるよう、何度も通いつめ、新しいデザインを提案していきます。 やがて、ものづくりの技術力だけでなくトライアルの姿勢が認められ、当時ライセンスブランド一辺倒だった時代、モダンなデザインで瞬く間に人気を博した、あるPB(プライベートブランド)のサンプル依頼と製品づくりまでを任されることになります。 そして同じ頃、叔父様の会社からも独立を果たしました。平成九年のことでした。 独立までのお話し、楽しく聞かせていただきました! 真摯にハンドバッグ作りに没頭されてきたということが、阿部社長の言葉の端々から伺えました。 次回は、最近始められたという新プロジェクトについてのお話を伺いました。そちらもお楽しみに。 ◆有限会社アヴェニュー 「アヴェニュー・ストーリー」 千葉県松戸市下矢切83-7 047-703-5751 文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝