「KAWANOWA」な人たち Vol.10後編 世界に“日本の高度な技術”を伝えていく/有限会社ミヤ・レザークラフト 「独自の“財布づくり”を通じて、パートナーシップが繋がり想いが広がる」

KAWANOWAな人たち

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考案されたオリジナル財布。種類もいろいろ。
前編はこちら

前回までは、ミヤレザークラフトさんが国内工場を立ち上げた背景、そして石井さんというパートナーと協業したオリジナル財布のストーリーでした。

今回はもうお一方のパートナーのお話しと、スタッフの方からお聞きしたセカンドストーリーです。

財布サンプル職人との強力タッグ

ミヤレザークラフトさんのお二人目のパートナーシップ・メンバーは、蔵前にて「財布塾」を開かれている財布職人の吉川信和氏です。

国内の大手革小物メーカーにて30年もの間、サンプル作りや、OVTA(海外職業訓練協会)のもとで海外現地縫製工場に対し、技術指導などもされて来た、こちらも技術面での大ベテラン。

現在はミヤレザークラフトさんから依頼を受け、山形工場の技術指導や、2016年9月からは豊岡まちづくり株式会社の「豊岡かばんアルチザンスクール」での講師などをされています。

アトリエでお話を伺いました。

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ミヤレザークラフトのパートナーシップ・メンバー 吉川信和氏

「私の転機は、革小物メーカーに入社してから2、3年して、職人さんの外部修行に行けたことでした。当時一番腕のよい財布職人さんの技術を、2ヶ月ほどかけて習得します。その後は、中国へ技術指導でしばらく駐在していましたが、のち日本に帰国します。その時に宮社長から声をかけていただきました。

自分自身のキャリアを再考するに当たって、“財布の図面を見れば型紙が取れる”という職人から受け継いだ技術力を活かし『サンプル職人』として生きる決意をしました。そして去年、プロの財布職人を養成する『財布塾』を立ち上げました。」

「豊岡かばんアルチザンスクール」での財布作り講義

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豊岡かばんアルチザンスクール。柳行李を模した壁面が印象的。

「豊岡かばんアルチザンスクール」は、兵庫県豊岡市と民間とが設立した第三セクターの施設。柳行李づくりから始まった歴史ある“鞄作り職人”を育成すべく、一年間で鞄作りのプロフェッショナルを育てる専門学校です。

鞄作りだけでなく財布や革小物を作れることもこれからの職人には必要ではないか、という現場のニーズに応えるべく、宮社長が吉川さんに白羽の矢を立てました。

日本でも数少ない、高品質な財布の技術を持つ彼の元には、一般のクラフト好きな方ではなく、プロとして業界内で活躍している方が少なくないのだそうです。

さて、「山形ファーレ」では女性職人さんが生き生きと働いていますが、さすがに日々の業務の中には“これは男性の方にお願いしたい”という仕事も出てくるのだそう。

そんなときに、工場に出向いてアドバイスをしたり、外部との折衝をしたりするパートナーとして登場するのも吉川さん。スタッフからも全幅の信頼があるので、ミヤレザークラフトにとっては重要な“技術力向上メンバー”と言えるのではないでしょうか。

産地がそれぞれ技術を共有しあう関係性

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宮社長に日本のものづくりの展望をお聞きしました。

業界内だけでなく、宮社長自身がものづくりについて考えていることは、世界に誇れる日本の技術力を、海外の人にも広く知ってもらうこと。豊岡の「アルチザンスクール」へと講師を派遣したのも、産地別で競合するのではなく、それぞれの地域が技術共有をしていくことで、日本でのものづくり全体が共に発展できる、ということを願ってのことでもあります。

また、「これからメーカーが生き残っていくにはどうするか」という策を常に考え、問屋に頼らない生き方を模索し続けています。今後更にオリジナルブランドを増やしていくための布石としても、「山形ファーレ」の存在は大きいと言えるでしょう。

「かつては、“川上(メーカー)・川中(卸)・川下(小売店)”という言葉の通り、この業界はそれぞれの役割が分かれていましたが、最近ではその際もなくなりつつあります。

最近弊社では、姫路のタンナー(革なめし業者)さんと協業し、彼らが自社の革から作製するバッグや財布などの、オリジナル製品づくりなどもサポートしています。

垣根を越えてお互いが、“世界に日本の技術を伝えていく”という共通のミッションを認識していければ、この業界全体も盛り上がり、作り手のモチベーションもアップするのではと考えています。」と宮社長は語ります。

「KAWANOWA」という場がその一片を担えることができれば、こんなに嬉しいことはないですね。

 

「山形ファーレ」の女性職人さんたちが手掛けるオリジナル商品を、これからも楽しみにしていたいと思います。

ミヤレザークラフトの皆さま、ありがとうございました。

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文責 CHIEnoWAコミュニケーション 川崎智枝