「革財布のできるまで」その2

革のまめ知識

前回からラモーダヨシダさんの「財布のできるまで」のコーナーを取材させていただいています。今回はそのつづき、「漉き」から。

 

(4)革の漉き

カード段やマチ部分など、財布の縫製には何枚も革が重なっている部分があります。それなのにコンパクトにまとまっているのは、「漉き」という技術があるからこそ。革の縫いしろを薄くし、まとめやすくすることです。

「漉き」には様々な種類があって、部分ごとに漉き分けられています。

もともと革は2mm程度から、厚いもので4mmほどの厚みがあります。

縫いしろを漉くことで、その部分はわずかコンマ5mm程度に。

単に薄くするだけでなく、「へり漉き」「なぞえ漉き」「ハズキ」など

パーツや部位に応じた様々な種類の漉きを施します。

また、腕がまだまだだと、漉きすぎて穴が開いたり切れたりすることもあるのだとか。

そんなサンプルまで展示してあります。やはり切ってしまうことなどあるんですねぇ。

漉きには繊細な職人技が求められる過程です。

漉きを入れるか入れないかで、お財布のボリューム感やサイドの直線が微妙に曲がるところなどがわかると思います。

下をよく見比べてください。

(5)財布の仕立て

革のパーツを漉いたらいよいよ「仕立て」の段階へ。

財布の仕立てには「へり返し」「切れ目」「細玉取り」「太玉取り」などの種類があります。縫う部分をどう仕立てるかということ。

「へり返し」はコバ(断面)が見えないように仕立てる方法で、「切れ目」は二枚の革を縫い合わせ、コバ部を磨きキレイに見せる方法です。

「細玉取り」「太玉取り」はいずれも、切れ目に薄く漉いた革を巻き付けて縫い付ける仕上げ方です。

そして、財布の職人技といえばこれ「菊寄せ」

仕立てるときに角部分にに集まった革を、細かく寄せていく技です。

そして「ネン押し」

見過ごされてしまいそうな技ですが、貼り合わせたパーツをしっかりと定着させるために、熱く焼いたコテでへりを押し付けながら線を引いていきます。この線を引くだけで、財布全体がすっきり引き締まった感じがします。

 

(6)素押し

革を裁断した段階で、「素押し」というものを施す場合もあります。

ブランドロゴや模様などを革に押印するプロセスで、これもうっかりするときちんと押せなかったり、ずれたりするそう。なかなか難しいですね。

そして財布を作るためには道具とミシンが不可欠。その道具たちとミシンはこちら。

「腕ミシン」という名前も面白いですが、その名の通り、腕が出ているような形をしていて、筒状になったものを縫ったりするのに不可欠です。


 

さて、「財布のできるまで」の展示はいかがだったでしょうか。

「バッグは縫製、財布は貼り」と言われるほど、財布はコンマ1mmのずれが許されない世界。薄い革を貼り合わせながら縫っていく作業は、実は女性が向いている世界とも。実際に、女性の革財布の職人さんは何人も活躍されているそうです。

 

そして、一つの財布ができるまでには、ベテランの職人さんでどれくらい時間がかかるものでしょうか。
二つ折りの“ファスナー付き札入れ”を作るとすると、

 

(1)まず型紙の制作に3時間。

(2)包丁を使って型紙に合わせて革・芯材などを手で裁断していくのに2時間。

(3)裁断した革に漉きを入れるのに約半日(4~5時間)。全部組み立てて最終縫製するのに約半日(4~5時間)。

合計して、約2日くらいかかって、ようやく1本の財布が出来上がります。大量生産には出せない、職人技を随所に感じることができるのが財布の世界と言えそうです。

 

財布がどう仕立てられているのかなど、普段はなかなか気づかないもの。これを機会に、ご自身のお財布の仕立てなどを振り返ってみると面白いかもしれません。

KAWANOWAでは、細やかな職人技を駆使した革小物や財布などの製品がたくさんあります。バッグの倍の工程を経て作られた財布など、改めてよく見てみることで、たくさんの発見がありそうですね。ぜひお手元で実感していただければと思います。

 

◆参考資料
株式会社ラモーダヨシダ http://www.lmy.co.jp/lmy/index.html

 

KAWANOWAは、「革とオトナのいい関係」を作っていくサイトです。
革についての、知られざる知識あれこれをこれからもお伝えしていきます。
また次回もお楽しみに。