【職人コラム】革財布、バッグ職人たちの“てしごと”に触れてみよう ~「菊寄せ」「刻みネン」~

アトリエからの便り

財布の「山万」さんのところでも紹介(アトリエからの便り特別編)されていましたが、財布に直線的な筋を入れて、革と革をしっかり張り合わせる“溝”のことを「ネン」と呼びます。

ただ、「刻みネン」というものになると、直線ではなく財布の“曲線部分”に施すものになります。
これが刻みネンを入れる時の道具。

財布は角がスムースに丸みを帯びていますが、裏を返すと細かく放射線状にヒダが入っています。
この部分を「刻み」または「菊寄せ」と呼んでいます。(〇の部分)

まさに名の通り、“菊の御紋”の花びらのような、繊細な刻みができるのが職人技で、うまい人はほれぼれするような美しい「菊寄せ」になります。これができれば、ほかの作業はすべて任せてよし!と言われるほどの技術なのです。

工程の順序としては、角の部分がきれいに畳めるようにごく薄く漉いてから、革を丁寧に内側に折り込んでいきます。コーナーに革が集まってダブつくので、それを自然なかたちでヒダを“刻み”、折りたたんでいく高度な技術です。

そしてこのヒダの数は、同じ製品を作る際には必ず統一させることが重要です。8個なら8個で統一させないと、角の大きさが変わってしまうのです。

きっと、みなさんの財布や革小物の角を見てみると、「菊寄せ」が入っているものがあるのではないでしょうか。職人の技術力の結晶でもある“小さな花びら”たちを見つけてみてください。