ニッピの革漉き機

(株)サンバッグ坂本 坂本收

Q1.この道具について教えてください。

「革を漉く(すく)」というのは、革を“薄く削る”ことを指します。 私たちはクロコダイルなどの爬虫類の革を扱っていて、革の厚い部分と薄い部分があります。 縫い合わせる際に薄く漉いておかないと、ミシンをかけた時に厚みが出てしまったり、ゆがんでしまったりします。

これは革を漉くための機械です。革の縫いしろ部分をこの機械に通すと、そこだけスッと薄く漉くことができるんです。 実は、商品や革によって、そして縫い合わせる場所ごとに、革漉き用の刃物を替えているんですよ。

財布を作る場合だと、実に80か所位を手作業で漉きます。 熟練の職人になると、指の感覚が鋭敏なので、漉いたときの0.1mmの違いが触った瞬間に分かります。 革小物の作り手にとっては、マストアイテムと言ってもいいくらいの機械なのです。

Q2.この道具とのエピソード、出会いを教えてください。

当社の職人のあいだで、受け継がれてきている革漉き機。 20年は使っているので、機械そのものの型は古いですが、職人たちがこまめにメンテナンスしながら長く愛用しています。 初心者が使いこなすにはクセがあって、慣れるまでに大変ではありますが、古いながらも調子はいいです。 これからも、職人たちが代々受け継いで、大切に使っていきたいと思います。

豆カンナ

(有)清川商店 松村由美

Q1.この道具について教えてください。

カンナというと、大工さんが木を削る時に使う道具ですが、実はバッグ製作のときも不可欠なアイテムなのです。

なぜ行うのかというと、見栄えが美しいのももちろんそうですが、硬い革のハンドルの場合、カンナでスムースに加工しないと違和感が残り、手が痛くなることもあるからです。

「豆カンナ」は革を薄くするための道具で、革漉き機と似ていますが、より細かな調整が出来ます。 バッグを仕立てる上で、厚みがある箇所を一部分だけ削りたいときによく使います。写真の木製タイプの使い方は、大工さんが使うのと同じようなつくりで、まさしく“豆カンナ”。 革パーツと並行に動かして薄くしていきます。そしてピーラーのような形の物もカンナと呼んでいます。 ハンドルのコーナーの面取りをする時は、紙やすりで磨き、コバ液を塗り、また紙やすり。 そしてコバ液を2回~3回重ね塗りをします。 これを5回くらい重ねることもあるなど、実は気が遠くなるような作業を何度も行って、あのハンドル部の磨きが完成しています。

Q2.この道具とのエピソード、出会いを教えてください。

こちら(ピーラーのような形)はSolingen(ゾーリンゲン)製。詳しくは覚えていませんが、少なくとも10年以上は使用しています。昔は刃物と言えばSolingenを使用していましたね(笑)

ネン

(株)山万

Q1.この道具の愛用期間を教えてください。

20年ほど使っています。

Q2.この道具について教えてください。

特に男性用の財布には「ネンを引く」という仕上げがあります。「ネン」は「念」と書き、まさに財布の“魂”のような部分です。

きちっとネン引きが施されているものが、クオリティを見極めるひとつの目安となります。 念引き(ねんびき)する際には、念(ねん)という道具を使って作業を行います。 写真のような機械を使い、先端を熱して革に“溝”を作っていきます。

財布を開いてみると、外周や各カード段、札入れの段など、革と革を張り合わせた部分に直線的な筋が入っています。これが「ネン」。 「ネン」を引くことによって、相互に接着し、パーツも剥がれにくくなります。

そして重要なポイントとしては、ネンが入っているものと入っていないものを見比べるとよくわかりますが、商品自体にしまりがでます。革に陰影ができ、印象が引き締まったものに見えます。

Q3.ネンの見どころを教えてください。

ネンの幅・力の入れ具合・温度などで、財布の全体的な表情が変わります。 また、染色系の透明感のある革だと、ネンを入れることで革に焦げ目がつき、カッコよくなるのでぜひ手に取って見比べてほしいですね。

竹ベラ

(有)野村製作所

Q1.愛用期間を教えてください。

写真のものは7年ほど使っています。

Q2.この道具について教えてください。

私たちは財布や小さな革小物を作っているため、細かな作業をするためのアイテムが充実しています。

これは、漉き上げた革パーツに、「のり」をひくための竹べらです。 財布を組み立てる際に使うのりを、竹べらにのせ、各パーツに付けて馴染ませます。職人さん自身が使いやすいように、ご自身で竹から削り出して、手に馴染む工夫をしています。

竹べらの良い所は、使用する職人さんが使いやすいようにマイナー加工が出来ることです。みなさんそれぞれが、豆カンナで削ったり、ヤスリでととのえたりして、自分のオリジナルなフォルムにこだわります。 職人さんによって、また使用する箇所や用途によって、それぞれ形が違うのも面白いところです。

Q3.この道具とのエピソード、出会いを教えてください。

上手な職人さんに作ってもらった竹べらがとても使い勝手が良かったので、自分でも作るようになりました。 竹が天然素材なので、使っていくうちに手に馴染んでくるところも気に入っています。