「日本での、革のうまれるまち探訪」その2 <東京都 墨田区> 革のうまれるまち 2017年9月4日2018年9月13日 by chie kawasaki ピッグスキンにプリントして、ナイフで細かなカッティングを施している 「KAWANOWA」は「革の輪」。とはいえ、「革」についての知識ってどのくらい持っていらっしゃいますか? 前回の「革のうまれるまち探訪 その1」でもお伝えさせていただいたように、日本国内でも革を作っている街が多くあります。代表的なものが<姫路市、たつの市>でした。 革の鞣しには水を大量に使うので、「川」が重要だと聞いていましたが、やはり市内を流れる「市川」を目にすると、“ここで何百年も前から革が作られてきたのかー”と感慨深いものがありました。 さて、今回の“まち探訪”は東京都の「墨田区」。え?東京で革づくり?と思いますよね。墨田区や台東区の“イーストトーキョー”エリア界隈は“東京のブルックリン”とも称され、様々な伝統的なものづくりが息づいている「まち」です。 1.国内で唯一“自給”できるピッグスキンを作る「東京都 墨田区」 手作業でレザーに加工しているところ (1)江戸時代から脈々と継承される豚革づくり ピッグスキンは読んで字のごとく「豚革」です。前回の<姫路市、たつの市>は牛革の鞣しがメインでしたが、ここ墨田区では「豚革」を得意とし、国内生産量の約9割を誇ります。 豚革の生産地となったきっかけは、戦後の豚の畜産増加に伴って、それまで他の革づくりを行っていたタンナーが、ピッグスキンへと切り替えていったのが始まりだとか。 関西が牛肉文化、関東が豚肉文化というのも、どこかで関連しているのではないでしょうか。 スエード調の柔らかな起毛タイプのピッグスキンバッグ 墨田区は江戸時代から、瓦、染色、材木などから始まり、明治以降には革、メリヤス、マッチ、せっけん、ガラス製品などを製造する工場が多く誕生しました。このエリアは日用品を中心とした、一大“近代軽工業”発祥の地でもあります。 ものづくりの技術は今なお継承されており、特にピッグスキンは国内だけでなく世界中にも多くのファンがおり、海外のコレクションに多数使用されてきました。 実は世界的に見ると、豚の“皮”というものは食肉と一緒にして流通してしまい、素材として扱われることはほぼ皆無です。けれど日本では、豚の“皮”は食べずに副産物として“革”へと加工する流通するシステムが出来上がっています。ですので、革の原皮の多くは輸入品であるのに対して、豚皮は純国産ということなのです。 ツ黴 (2)ピッグスキンの持つ特徴を生かす ピッグスキンの表面には、三つづつ並んだ毛穴があるのが特徴 タンナー(鞣し業者)は墨田区の東側エリアに集まっており、墨田川と荒川に挟まれるなど豊かな水源に恵まれています。 川をはさんで向かい側の、台東区浅草、蔵前、浅草橋界隈には、革や靴、かばんをはじめとした「卸問屋」が集積しています。 鞣しから、染色、加工、漉きなど専門的な職人さん達や中小の工房が密集しており、製造から流通までを担うことができるエリアとしては、日本でも珍しい“革のまち”かもしれません。 ピッグスキンの大きな特徴は「3つ1組」で革の表面に開いている小さな“毛穴”。そのために、通気性がよく軽いので、革靴の内側(ライニングと呼びます)に多く使われてきました。 ただ最近では、国内で安定的に原皮が供給される強みを活かし、ピッグスキンを“主役”にする試みも見られます。 例えば、革に様々な染色を施したり、転写フィルムを貼ってカラフルなプリント地にしたり、細かくレーザーカットしたりと「これが革?!」と見まごうようなテクニックも増えてきました。 ツ黴 ベースに使われているのは、“真っ白な革”。一般的には革を白くすることは大変難しいと言われてきましたが、そこに果敢にチャレンジするメーカーも増えています。これを下地として、微細なインクジェットプリントを鮮やかに載せるような工夫も見られます。 経年変化する“革らしさ”を楽しむことはもちろんですが、逆にピッグスキンではカラフルさや、加工のバリエーションを味わうことができます。革なのに発色がキレイ、仕上げも様々あるので、バッグやレザージャケット、レディスシューズなどに使われています。 さまざまなプリントをほどこしたピッグスキン また墨田区内のタンナー各社が力を入れているのは、「エコレザー」や「クロムフリー」の革。 エコレザーというのは、「日本エコレザー基準(JES)」に適合している革のことで、できるだけ“環境負荷”を減らすことに配慮し、環境面への影響が少ないと認められる革材料のことを指しています。 ホワイトのエコレザーを乾かしているところ 子供が触ったり、身体に直接触れる機会も多い「革」だけに、ホルムアルデヒドや重金属といった化学物質を使っていないエコレザーは、いま市場でも大変な人気です。今後も、「環境に配慮する社会」のトレンドを背景にして、数多くのエコレザー製品がマーケットに登場していくのではないでしょうか。 さて東京で革づくりということは、少し理解していただけたでしょうか。 次は少し北上して「草加」へ。「おせんべいだけじゃないんだ(笑)」と思われるかもしれませんね。お楽しみに。 ◆参考URL TOKYO LEATHER PIGSKIN 2017(パンフレット) 日本革市(http://www.kawa-ichi.jp/) 一般社団法人日本皮革産業連合会(http://www.jlia.or.jp/) ◆KAWANOWA取扱商品のご紹介 ピッグスキン使用商品 KAWANOWAは、「革とオトナのいい関係」を作っていくサイトです。 革についての、知られざる知識あれこれをこれからもお伝えしていきます。 また次回もお楽しみに。