【職人コラム】おかず横丁と、革製品の技能試験

アトリエからの便り

みなさま、こんにちは。株式会社服部の代表の服部栄一と申します。

創業は昭和33年。国産ブランドのOEMメーカーとして60年余りとなります。
生粋の浅草橋生まれの地元育ち。両親は二人とも多忙で、朝から晩までずっと働きづめでした。

小さい時は近所の「おかず横丁」までよくお遣いに出され、コロッケや串ものなどの総菜を買いに行きました。あの時代、周りにはそんな職人の家庭が多かったので、「おかず横丁」は大繁盛。
お母さん達はご飯を作る間も惜しんで、ミシンを踏んだり検品したりしている時代でした。

工場には住み込みの職人さんたちもたくさん働いてて、5、6個なんてもんじゃなく、コロッケ20個とか焼き鳥50本とかですからね。
子供ながらに「ひとつぐらいいいだろう」とつまみ食いしながら食べて帰り、「少ないじゃないの!」とよく母親に怒られてました(笑)

そんな思い出話しもこのくらいにして。

さて、20年以上も弊社で働いているハンドバッグの職人さんたちは、みなさん腕の立つ方々ばかりです。
ただ今までは、“腕のいい職人”というくくりだけでしたが、技術力を客観的に判断して、「革製品技能試験」を実施するという試みが皮革団体でスタートしています。

「革製品」と一言で言ってもジャンルは多岐にわたります。


昨年度の技能検定授賞式

革靴、かばん、ハンドバッグ、財布といった革小物、革ベルト、革手袋があります。
簡単な仕立てでしたら革を切って縫えば、バッグなどは素人でも出来てしまいますが、これはそういうものとは全く違います。

長くプロフェッショナルとしてメーカーで働いていた方であっても、時には落ちてしまうこともある大変難しい試験です。

私も7年前の第一回から“試験官”として、この事業に関わらせて頂いています。私自身は職人ではありませんが、様々な製品を見てきた目利きとしての自負はあります。例えばタグを隠しても、“〇UCCI”と“〇ERMES”のかばんの違いがわかるんですよ。

最近では、革製品などものづくりに興味のある若い方々も増えていますし、この資格試験を通してもっと職人さんの技術を評価していただき、トータルで社会的・経済的な地位を向上させていきたいというアツい思いもあります。

実は、第一回目の試験の1級合格者は、私の会社から輩出しました。元いらした社員さんで、一級を取得してからは「マイスター」として殿堂入りを果たした方です。
私自身本当に嬉しく、誇らしい気持ちですね。私がおかず横丁で買ってきたお惣菜が良かったのかもしれません(笑)

今年も、「第8回鞄・ハンドバッグ・小物技術認定(皮革部門)試験」が3月上旬に実施されました。発表は4月中旬。みなさんドキドキしながら発表を待っていることでしょう。
私も様々な提出作品を拝見することで、厳しく、そして温かく、若い職人のみなさんの成長を見守って行きたいと思っています。